超自然主義生活

微細霊感から超霊媒シャーマンになっていく過程を綴った非日常的日常生活※ノンフィクション

2016.7 三霊揃う

コンが眷属になって、ほぼ一月半ーーこの家に引っ越してきてから、ちょうど3ヶ月目となった日の夜。

寝床に横になったものの、背中に出た蕁麻疹がかゆくて眠れずにいたら、足元に見上げるほど……って、寝っ転がっている時点で何でも見上げる事になるんだけども……大きなホワイトタイガーのような妖が座っているのに気がつきました。

 

蠢いては渦を巻く不思議な虎縞模様のトラモドキ。目が合うとすぐさま話しかけられました。

 

「我は『ビャッコ』と申す。あれ(とコンを指差し)をちぎった『ツヤ』と共に、お稲荷様にお許し乞うて頂きたく、まかりこした次第。何卒よろしくお願い申す」

 

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私は、『こいつ、三霊のうちの一匹なんだな』と判りました。

わざわざお稲荷さんにお許しもらわなんって事は、間違いなく狐霊。今までコンに聞いていた話を照らし合わせると、答えは自ずと知れるもの……

 

お稲荷さんには、五狐神『天狐・地狐・空狐・赤狐・白狐』と呼ばれる5匹の狐霊と『風狐・野狐・艶狐』と呼ばれる3匹の狐霊が眷属にいて、五狐神はお稲荷さんと共に人々を見守る役目を担い、三霊はお稲荷さんに対して不敬である人間を懲らしめる役目を担っています。

 

ぶっちゃけ、祟り神の類ですよあーた。よくもまぁ、そんなモン肩に乗せて伏見まで行ったもんだ、我ながら。

 

とはいえ、基本は神さんの使いである事に変わりありませんから……と、フォローしてみる。

 

とにかく、三霊というのは3匹揃ってこそ三霊なので、翌日、ビャッコと名乗った狐霊と共に、近くのお稲荷さんまで歩いて行きました。

行く道すがら話を聞くと、ビャッコは野狐で『ヤッコ』と呼ばれていた事、コンの手足をちぎったのは艶狐の『ツヤ』、三霊はまるでじゃんけんぽんのような関係(野狐は風狐に弱く、風狐は艶狐に弱く、艶狐は野狐に弱いんだそう)で、1匹でも欠けるとバランス崩してしまうそう。

 

近くのお稲荷さんは、勧請されてすぐ放置……というか、ちゃんとお祀りする人がいなくなってしまい、お稲荷さんは五狐神と共に伏見に帰ってしまったそう。でも、お社をそのままにしておく訳にもいかず、五狐神の白狐が三霊(五狐神にとっては、いわば雑用係)の野狐に、

「おぬしはわしと名が似ているから、これからはビャッコと名乗り、社守をせえ。三霊の仕事は風狐と艶狐が担え」

と役目を分けてしまったところから、3匹の関係が偏ってしまったーー

 

艶狐にとってのブレーキ役であった野狐が社守になると、風狐と艶狐どちらが役目をこなすかで揉めた時、風狐は艶狐に一方的にやられてしまう訳で……後は推して知るべし。

 

近くのお社まで行くのに、猿田彦や鬼子母神様もついて来られる物々しさの中、淡々と語る野狐。ふと気配を感じて振り返ると、真っ黒な中型犬くらいのモノもついて来ていました。

 

「ツヤはフウ……いやコンをちぎった時に黒く穢れたのだ。あれも清めてやって欲しい」

 

清めてって言われても、と思う間もなく鬼子母神様がそれを抱き上げて撫でさすると、あっという間に白い姿になりましたーー鬼子母神様、ありがとうございます!

 

「わしが清めたのは表だけ。まだ魂源には穢れが残っておる。後は莢猫が清めてやれ」

 

できるかしらん……でも、コンも何とかなったんだから、きっと大丈夫。ツヤこと艶狐は鬼子母神様に抱かれたまま、お稲荷さんのお社に到着。鳥居の前あたりから五狐神が待っていて、

 

「ウカタマ様がお待ちかねじゃ、はよぉはよぉ」

 

と急かされました。確かに、小さな社の鏡には既にお稲荷さんが待ってくださっていて、稲荷秘文というお稲荷さんに捧げる詞を唱えると、

 

「莢猫、おぬしには手間をかけさせたな。すまぬ。三霊はわしの眷属ではあるが、既に風狐はおぬしの眷属となっている。それゆえ、野狐と艶狐もおぬしに託す。差配は鬼子母神に委ねる」

 

まさかの丸投げですかウカタマさん……鬼子母神様は豪快に笑われて曰く。

 

「近くの鬼子母神堂を探して参れ。神式に則り、そこで野狐と艶狐の処遇を告げようぞ」

 

神式に則りってーーそういえば、最初に鬼子母神様のお声を聞いた時、コンの事『出て行かぬなら祀れ』っておっしゃってたあのお言葉は、神式に則っていたのか!ーー

 

気づくの遅いよ……確かに、狐霊はほぼ神サイドだもんね。仏サイドの狐霊もいなくはないけど。

 

と、いう訳で。

 

ネット検索で我が家から一番近い鬼子母神堂を見つけ出し、管理しているお寺さんに電話してお堂が一般解放されているか確認してから、3匹に増えた狐霊を肩に乗せーー車で約15分。

もう、何を言われても驚かないよ鬼子母神様。

 

「莢猫には覚悟が見えるが、野狐と艶狐はまだ自覚も足らんようだの。風狐は既に莢猫にコンという呼び名をもらっておる。そなた等も新たな呼び名を付けてもらえ。コンは手足をちぎられた事によって苦行も終えたが、そなた等は全く苦行が足らん。しばらくは莢猫の眷属見習いとする。莢猫と共に精進せぇ」

 

こうして、新たな見えざる家族が増えました……野狐には『ミヤ』、艶狐には『シチ』という呼び名を付けて、眷属見習いの手続き終了。図らずも、三霊揃いました。

 

いや、コンが三霊であろうと薄々気づいた時点で、絶対、あと2匹来るよな……と読んではいたのです。

 

ホントに来たよ。何をどうすればいいのか全然分かんないから、あんた達はあんた達で頑張ってね。

 

それから一週間もしないうちに、シチは光を浴びると尻尾の先が虹色に見えるくらい透き通った白い毛色になり、ミヤの黒い渦虎縞は輝く銀の渦虎縞になりました。早っ!

更に二月後には、改めて鬼子母神堂に呼ばれ、ミヤとシチも莢猫の眷属になりました。

 

しかし。三霊眷属にしている人間ってどうよ?

 

『見える』人が見たら、狐憑きにしか見えんやろ……あ、春巻さんも合わせると…………

もう、想像するの、やめよう。うん。←逃避しようのない現実