何かと不具合の多い新居でした……引越前後の地震はさておき。幸先の良くなさは、それだけではありませんでした。
これは、契約前の内見の時から、薄々感じていた事なのですが……1階洗面所から風呂場にかけての空間から、階段途中の天井付近、2階飼い主様の部屋入口辺りに『何か』が居るのです。
契約前に気づいてはいたものの、飼い主様がこの物件をあまりにも気に入ってしまったため、『何か』が居るとは言い出せないまま本契約、引越して来てしまいました。
だもんで、ある程度荷物が片付いた時点でお札を貼ったのですが……これが裏目に出たようです。良かれと思って貼ったお札が、実は『何か』を閉じ込めてしまう事になるなんて。
初めは、軽く左こめかみがもわっとする感じ……気配を薄く感じるとこうなります……だったのが、次第に、左こめかみにズキンときて存在を主張するようになりました。
左こめかみが痛む時は、キッチンの浄水器の水を勢い良く流して、右手の親指・人差し指・中指で塩をひとつまみコップに入れて、流している水を少し溢れるくらい注いで、三口飲んで残りは捨てながら、
「清めたまえ」
と言う事で、簡単なお祓いができるそうです……年配の知り合いに霊感ある方がいて、そう教わりました。
前の家では、これで頭痛が治まっていたのですが、この家では一時しか効果がありません。何せ、居憑いているのか閉じ込められているのか、どちらかは分かりませんが、階段に近寄るだけで痛くなるのです。
まあ、痛くなるだけではなくて、ちょっと困った事態になると一言アドバイスをくれたりもしていたのです。
新居リビングにはピクチャーレールがあって、そこへ一輪挿しに入れた福笹をワイヤーフックを使って提げようとした時のこと。
フックのカギが浅くて地震が来たら一輪挿しの紐が外れそうで、どうしたものかと悩んでいたら、頭の中に「紙を貼れ」という言葉が浮かびました。早速、フックのカギ部分に紙を貼り付け、事なきを得たのです。
とはいえ、相手は文字どおり頭痛のタネ。このままじゃ、まともに暮らせなくなってしまう……ちょうどその時、飼い主様おかあさんが定期的にお寺へ通ってあったのを思い出し、思い切って相談してみたところ、
「そんなら、5月4日に鬼子母神祭があるから連れて行ってあげる」
宗派は違うけど、と、日蓮宗のお寺へ連れて行ってくださいました。南無妙法蓮華経、です。日頃、南無阿弥陀仏は唱え慣れていますが……南無妙法蓮華経は何度も舌噛みそうになりました。ここだけの話。
鬼子母神祭は子どもを守るためのお祭りだそうですが、祈願する事があればそれもそっと叶えて下さると住職が言われたので、憑かれやすい体質を何とかしてーーと胸の内で呟きかけてすぐ、
「それはどうにもならぬ」
という、低く野太いお声が。そんな、殺生なぁ……ならばせめて、今家に居る『何か』を何とかしてください。左こめかみ痛くしたり左肩乗ってこられたりするんですぅ……
「出て行かぬのなら、祀れ」
何ですと?! そんな、いくら何でも祀れだなんて……どんなして祀れば良いか分かりません! 半ば腹立たしくなって訴えた途端。
スズメが2~3羽、ムササビやモモンガだと3~4匹くらいで鮨詰になりそうな、小さな家型巣箱が脳裏に浮かんだのです。
そんなちっちゃい巣箱でいいんかい!
帰りに、おかあさんに鬼子母神様から暗示された家型巣箱の話をして、おかあさんの買い物に付き合っての雑貨屋さんでーー実用だと鍋蓋と菜箸置きーー屋根シリコン・プラスチック製家型アイテムを発見。家型巣箱を入手するまでの仮住まいにしてもらおうと購入しました。帰宅後、ネットショップで木製巣箱を注文。
仮の祭壇は2階物入れの最上段に作り、そこに仮住まいの家型アイテムを置きました……中にはお尻が痛くならないように、スポンジと招き猫の座布団1枚拝借して……仮の家を置くなり、
「依り代が欲しい、依り代よこせ。手のひらに乗るほどの大きさで良い」
以前より言葉が長くなっとりますがな……鬼子母神祭に行ったおかげか、せいなのか、今まで以上に聞こえるようになりましたよ?
大体から、追い出そうってのを祀ってやるんだから、名前くらい名乗れよ。するとーー
「ポチ」
はい? ふざけてないで、名乗りなさい。
「ポチ。あるいはタマ」
おちょくっとんな、絶対。いいんだな、これからはポチって呼んじゃうよ? 後から本当の名前言ってもポチって呼ぶからね。
と、いう事でーーうちに居る『何か』はポチで決定。依り代は、待て次号 !!